経営力の増強
ビジネスパートナーを選ぶということ
21世紀に入ってビジネスの世界の様相は大きく変わり、いわゆる「昨日の敵は今日の友」ということは日常茶飯事である。このモデルを古くからの言葉で言えば「合従連衡」ということになる。利害の衝突を制御することが難しい時代となったので、誰とパートナーを組むかという意思決定も非常に複雑になったし、調整作業にも手間が掛かることが多い。こうした過程を経て「勝つ」戦略を立てる為には、ますますパートナー選定に慎重さが要求されるが故に、新たに付き合う先は、トップがすべて掌握していなければならない。「この仕事をすることが、またこのパートナーと組むことが他の仕事やパートナーに影響が無いか?」と一歩とどまって考えるプロセスを必ず実行することが必要である。一方、いったん選んだパートナーを簡単に変えてはならない。勝負の趨勢はパートナーの選択で決しているのであって、選択の過ちであれば責任は相手にあるのではなく、自分にあるということである。英語では、戦闘中に作戦を急変させることを“change horses in midstream” というが、これは河を渡る前に強い馬をしっかり選んでおかねばならないのであって、渡河中に馬を変えるという愚を犯すなということである。その様な闘いの仕方では必ず敗北が待っているのである。
情報の共有は自然現象ではない
軍事用語がビジネスに転用されて非常に多用されている。例えば戦略( strategy)、戦術 (tactics)、同盟(alliance)、兵站(logistics)などがすぐ思い浮かぶ。こうしてみると我々の日常語も余り平和的ではないようであるが、組織の目的が“win”にあるとすればこうした概念の類似(analogy)は当然といえば当然である。
しかし軍隊は命令系統(chain of command)で動くが、我々はリーダーのもとで動く。リーダーシップ経営が真に機能する為には価値観の共有の上に立つ「情報の共有」が必須である。
①「知識」と「データ」:
毎日のビジネスを行っていく上で、世の中や関係する業界の動向、取引先/競合先の動き、新技術開発動向など様々なことを「知る」ことが必要であるが、その「知る」対象には次の4つがある;
・知識 knowledge (学習すべき対象)
・データ data (刻々入手すべき対象)
・情報 information (発信者から受信者へ受け渡される対象)
・諜報 intelligence (軍事上の極秘情報を限定的に指すので、「諜報」と訳すのが正しくて、我々の世界の情報とは異質)
知識やデータは“静的”なもの故、出版物を学習したり、知識を持つ人から聞くことに よって則ち個人の努力とそれを後押しする組織内教育によって相当程度迄その量と質を拡大することが出来るし、各々個人レベルで経験の集積と共にその量を増加させることが出来る。
②情報の共有
情報(information)は本来的には“動的”な言葉である。則ち発信者と受信者があって初めて成立するinformという行為の結果を指す名詞である。
「情報の共有」は組織人としての当然の義務と考えられているが、実際には極めて 難しいのはこのinformationが内包する「動的特性」に起因している。いくつか情報の共有と流通を阻害する要因を考えてみる;
1)情報の出し手(A)が「発信」という努力を行うことが先ず必要である。
2)受け手(B)がその情報を欲していることを情報を持つ人(A)が知らなければその発信は行われない。
3)(A)は発信相手の選択の自由があるから、(B)とは「利害の相反がある」、「価値観が共有できない」と思えば発信しない。
4)(B)の受信能力が低いと(A)が発信した情報は減衰するか歪曲されて無意味となる危険がある。
こうしたことを防止する為の一環として、会社内では「適時・適確の報告」と「間断無き 対話」が、また組織内の部間の「カベ」を除去する為に、さまざまな工夫が必要である。何はさておき、「“秋深し 隣は何をする人ぞ”シンド ローム」からの脱却を図り、「オイオマエの仲」の人間関係に基く価値観と情報共有の基礎作りが不可欠である。