« 「ギリシャ危機」救済措置は、「ユーロ危機」の解決にはならない | Home | 中国のインフレ懸念が現実化し始めた »
メキシコ湾岸事故で、深海油田の安全性に重大な疑問が生じた
By admin | 5 月 13, 2010
2010年5月13日(木)
4月21日に、ルイジアナ州沖66kmの洋上で深海底での原油掘削作業に従事していたオイルリグが爆発炎上し11人が死亡するという事故が発生したが、以来日量5000バレルの原油の海上への流出が続いている。
すでに流出した原油は300万バレルに達していて、土曜日には160km離れたアラバマ州のDauphin Islandに漂着し始めている。
今回の事故が、「未曾有の環境災害」になることを恐れたオバマ大統領以下関係閣僚は事故以来現地入りして、その関心の高さと真剣さをアピールしてきたが、検察当局も動き出した。
Eric Holder検事総長は、「司法省係官を現地に派遣し、沿岸警備隊と協議を開始させた。問題は今回の事故に関して過失(misfeasance)や、不法行為(malfeasance)がなかったかということだ」とコメントしたと、The Wall Street Journalが伝えている。
一方、油田の探査・掘削事業者であるBPは、事故発生以来懸命に流出防止策を講じてきたが、先週から行われた「巨大な鉄筋コンクリート製ドームを流出箇所の真上に降ろし流出を一時貯留し、上部の開口部から原油を抜き取っていく」という試みは失敗に終わった。
この作業は約1500メートルの深海底で行われているが、このドーム方式がこのような深いところで行われるのははじめてで、メタンガスが原因のドームの開口部の詰りという思わぬ障害に遭遇している。ドームの上部は、漏斗をさかさまにした形になっている。
もともと原油に含まれたメタンガスが急膨張してシールを突き破ったのが4月21日の爆発の直接原因と推定されているが、今回は、BPが油井に対して噴出を阻止するために投入したコンクリートが固まるときに発した熱が、メタンを気化させてしまった。
メタンガスは、深海の高圧下では海水と反応してシャーベット状の「メタンハイドレート」(icelike hydrates, a slushy mixture of gas and water)となるのは広く知られている事実であるが、これが上部開口部の内部に付着して詰りを起こしたと、BP側が説明している。このシャーベット化(Deep-Sea Ice Crystals)を防止するために凍結防止剤としてメタノールの注入を考慮中であるとしている。
また、BPは次の一手として莫大な量のごみを海底の噴出孔めがけて投げ込んで流出を止めるという、”junk shot”(ゴミ攻撃)を考えている。
この事故を起こしたオイルリグDeepwater Horizon号は、スイスに本拠を置くTransocean Ltdが所有するもので、BP社がリースを受けている。Transocean社のホームページを見ると、事故状況はSECに報告済みであるので、そちらを参照するようにとすることと、事故保険は総額560億円が付保されているとの簡単なコメントが掲載されているのみである。
ある試算によると、油井一本あたりの費用を100億円、毎日の支出が10億円で180日続くとして、総額約2000億円程度、そしてこれに損害賠償を加えても3000億円程度ではないかとしている。過去の大規模原油流出事故での損失総額が2500億円レベルである。
しかし、今回原油流出防止に失敗したこと、流出規模が格段に大きいことを考えると、「未曾有の環境汚染」が「未曾有の損害賠償」の危険が現実化しつつあるとの懸念が強まってきた。
米国政府、湾岸各州、沿岸警備隊などが協力して、環境汚染対策を行っているが、すでに総延長200kmに達するオイルフェンス(booms)が張られたが、沿岸警備隊は、最終的に10万kmのオイルフェンスを設置できるよう準備しているとしている。そのような量のオイルフェンスが果たして確保できるかどうかがまず問題となっている。
Topics: 一般経済情勢 |
Comments are closed.