ギリシャ危機深刻化、IMF/EU協調融資決定にも市場納得せず
水曜日, 4 月 28th, 20102010年4月27日(火)
ギリシャ救済が大詰めを迎えているが、EU内でも最大の救済資金拠出国となるドイツのメルケル首相が、ドイツがギリシャ支援方向であることをメディアに明らかにした。
これをBBCは「メルケル首相は、ギリシャが一定の条件(certain conditions)を実行すれば、援助を実行するとの立場」と報じ、一方The New York Timesは、「メルケル首相は、ギリシャが緊縮財政政策をより強化することを遵守することを強く求めた」ことを強調し、表現に差が出ている。
それを反映して、NYTは、そのトップ記事の見出しを「ギリシャ債務問題への信認またもや低下」として、ギリシャ国債がさらに値を崩し新安値となったことと、ユーロも対ドル、対ポンドで安値となったことを報じた。
現在火急の問題としてIMFとEUがギリシャに対する約6兆円の緊急協調援助を協議中であるが、それによって「5月危機」を乗り切れても、いずれにせよ同国の巨額な対外債務返済はその先は無理とする見方が有力となってきたのである。
投資家の信認低下によって、月曜日に10年物国債は9.5%まで上昇しており、こうした高利借入コストの上昇のもとでは、ギリシャが「2012年までに財政再建を果たせねばならない」という条件の実行は、GDPの115%に及ぶ債務返済に苦しむなかでは無理だろうとの反応が出始めた。
その事態を、NYの市場関係者は、「市場は、債務リスケを織り込み始めた」(“The market is now pricing in a debt rescheduling,”)と、NYTに語っている。
大幅な債務カット(deep haircuts)と、返済繰り延べ(rescheduling)は、これまでも中進国や最貧国では常態化してきたが、EU加盟国で通貨ユーロに参加している国としては、欧州通貨同盟の歴史上初めての事態である。
EU加盟国の中では、ギリシャにユーロ通貨を放棄させるべしとの議論も出てきたが、メルケル首相は、月曜日記者団に、「ギリシャのユーロ圏追放はない」と言下に否定した(rejected the idea of expelling Greece from the eurozone)。
ポルトガル、アイルランド、スペインとギリシャはPIGSと不名誉なあだ名で一まとめに呼ばれているが、万一ギリシャがユーロ内にとどまれなければ、影響はこれらの国にも波及して行くのは不可避である。
月曜日ポルトガル、アイルランドの国債の利率もギリシャとともに上昇した。
オバマのウォールストリートへの規制第一歩、ゴールドマン詐欺罪で訴追
土曜日, 4 月 17th, 20102010年4月17日(土)
SECがGoldman Sachsを詐欺容疑で訴追したことから、金曜日のNY株式市場で同社株は10%以上値を下げ、これを嫌気した市場も大幅安となった。
米国証券取引委員会(SEC)は、金曜日Goldman Sachsと、同社の当時の担当副社長Fabrice Tourreを、サブプライム住宅ローンをベースとした債務担保証券CDO(Collateralized Debt Obligations)を、「破綻することを仕組んだ上で」投資家に十分な情報を提供せずに販売して、10億ドルの損失を与えたとして、詐欺に関する民事訴訟(a civil suit)を裁判所に提起した。
SECの訴状を要約すれば、「Goldman Sachsは、必ず破綻するように極秘に仕組んだ証券を売りつけた。ヘッジファンドPauson社が仕組んだものにも関わらず、あたかも公平な第三者が公正に選択した信用度の高い住宅ローンをベースとするものであると思わせたことが詐欺に相当する」ということになる。
Paulson社は、サブプライムローンの破綻を予想して、空売りのポジションを持っていたので1000億円の利益を得、一方投資家は1000億円の損失を蒙り、Goldman Sachsは、15億円の手数料収入を得たと、SECは算定している。
2007年に売り出されたCDO、ABACUS 2007-AC1は9ヶ月間で組み込まれた債務の99%が信用格付けがひき下げられて実質的に破綻した。
会社とともに訴追されたTourreは、現在31歳。フランスのEcole Centrale Parisで学士号を取得後、Stanford Universityで、オペレーションズ・リサーチで修士号を取得。2001年にGoldman Sachsに入社して、仕組み証券の担当副社長となったと、その経歴をThe Wall Street Journalが伝えている。
同氏は、混乱の中で友人に次のようなメールを送っていたとSECが公表している。
「この建物全体は今にも崩壊する。生き残る可能性のあるのはただ一人、あのすばらしいFabulous Fab(rice Tourre)様一人。この複雑怪奇にして(complex)、人の金で組んだ(highly leveraged)、不可思議な取引(exotic trades)は、彼の生み出したもの。彼にさえこの怪物の正体はよくわからんときたもんだ。(without necessarily understanding all of the implications of those monstruosities(まま)!!!!”)」
このメールほど、Wall Streetで、サブプライムローンの崩壊をきっかけとする金融危機を作りだしたカネの亡者どもの本音を活写しているものはない。崩壊感覚を味わいながら、自分の名前で駄洒落を飛ばし、フランス人特有のmonstrosityをミススペルしてところも笑える。
Goldman Sachsは、自らも90億円の損失を蒙っており、「SECの訴追は事実無根」と公式に反論をしている。不思議なことに関与したヘッジファンドPaulson社は訴追を免れているが、SECの説明を読むと、「投資家にいかなる説明(representation)をしていない)として、詐欺行為の関与者として認定しないということらしい。
Goldman Sachsは、もうひとつの金融商品CDSで、ギリシャという国家の財政を破綻に追いやったとして、一身に非難を浴びている最中である。今回CDOに関する詐欺罪での訴追を受けたことは、リーマンショック後の唯一の生き残り投資銀行にも、いよいよ「最後の審判」が下りるということかもしれない。
米国景気は本格的な景気回復に入ったか?
木曜日, 4 月 15th, 20102010年4月15日(木)
NY株式市場は数時間前に続伸で引けた。S&P500Sは約6週ぶりの大幅高の1,210.65で、1200ドルの大台にのせた。また、ダウ工業株30種平均は103.69ドル(0.9%)高の11123.11ドルとなった。
発表が始まった第1四半期決算の出だしが好調で、今後大手も引き続き好調決算の発表が続くと予想される中、3月の小売業績が予想を上回る伸びを示したことを率直に反映した。The Wall Street Journalは、これを「景気回復の証拠は数多」(Evidence mounts of strong recovery)と見出しにつけて報道している。
また、Financial Timesは、同日のバーナンキ連邦銀行議長の議会証言を、「強気の景気見通し」(a bullish tone on the economy)、そして、「見方は明るくなった」(upbeat)と評している。
同議長は、議会証言で、「われわれは、緩やかな景気回復軌道(a path to moderate recovery)にある。二番底の危険は否定できないが、数ヶ月前に比べればその可能性は低くなっている」としたが、同時に「景気にはまだ足枷(“significant restraints”)が残っている。なかなか下がらない失業率、低迷する住宅建設、連邦政府・州政府の惨憺たる財政状態がそれだ」との警告も忘れなかった。
同議長は同時に、3月の公開市場委員会(FOMC)の「連邦銀行は、相当期間例外的に低い金利水準を維持する」との発表通り、米国経済が完全に回復するまで政策を継続すると確認した。
メディアによっては、この後半部分の警告を中心にして報道しているところもある。全体の証言トーンが、強気(bullish)で明るい(upbeat)であったことは変化としてより注目すべきなのであろう。
また業績回復の著しい第1四半期決算を公表したJPMorganのCEO Jamie Dimon氏も、NYで「景気がふたたび失速する危険は薄いとし、景気の底堅さに対する投資家の自信が戻った」とのコメントしている。しかし、同時に同社の復配は、「雇用と消費の本格的回復を確認するまで(until it saw sustained rises in employment and continued good news from consumers)は見送るとしている。
このように有力な経済人が、二人とも、「景気の二番底の可能性は低い」(the risk of a “double-dip” recession)としながらも留保条件をつけたことで共通しているので、「楽観しつつ慎重な態度を取っている」ことに注目しておく必要がある。
欧州金融危機、ギリシャ救済だけで済むか、日本の他山の石
月曜日, 4 月 12th, 20102010年4月12日(月)
日曜日に行われた緊急電話会議で、EU加盟国蔵相会議が開催され、「IMFの支援に加えて、来年300億ユーロ(約3兆円)の救済借款をEUとしてギリシャに供与する」ことを決定した。
これであいまいな態度に終始してきたEUも、市場の沈静化に向けて本格的な出動を行うことになり、ユーロ発足以来最大の危機は、一応の回避される見通しとなったと、Financial Timesが伝えている。
この3年間の緊急借款の利率は約5%である。一方現在の2年物ギリシャ国債の市場金利が7.45%であるので、相当な優遇レートに設定される。なおIMFの100億ドルの融資条件は、3年で2.7%となっている。
EU各国もIMFも一様にこの決定を「重要な第一歩」と歓迎している。ギリシャのGeorge Papaconstantinou首相は、「まだ政府として資金の払い込みを要請はしていない。一方この措置によって借款導入が可能となったことで、市場から有利な条件で借り入れが可能になる」との自信を示した。
この奇妙な「自信」を、市場がどう見るかは、月曜日の12億ユーロの3.5年物国債の応募状況と、その金利水準が、その答えを出す。またEU中央銀行(ECB)とギリシャは、月曜日にIMFと、IMFの支援に伴う条件について詰の交渉を行うこととなっている。
今回、EUの救済決定がここまで紛糾したのは、フランスは優遇金利とするようにと求めたことに対し、ドイツが市場金利を求めて譲らなかったからである。また、EUはあくまで「今回の決定はギリシャへの助成措置ではない」との公式の立場を崩していない。各国の選挙民に対するジェスチュアである。
The Wall Street Journalは、この間の動きをうまく伝えている。「EUの意思決定のスピードは氷河の流れ(the glacial pace)のようで、市場をいらだたせてきた。EUが大枠でギリシャ支援を表明しても詳細まで踏み込まなかったことから、ギリシャ国債の価格は大きく下げ、金利は上昇した。それはまったく意図とは反対の市場の反撃であった」。
ギリシャとそっくりに、国家財政赤字と債務残高が急膨張しても財政規律のある政策をとらず、景気刺激策と称してばら撒き財政を続ける国があるとしよう。そしてただただ他に融資先がないという理由で、国内に巣篭もりする金融機関が国債を買ってくれるので金利が「異常に低い」国があるとしよう。その国がギリシャと同じ道を歩むことは否定できるだろうか。
オバマ、人民元対ドル40%過小評価修正の戦いを6月まで延期
日曜日, 4 月 4th, 20102010年4月4日(日)
オバマ政権は、財務省が議会に4月15日までに送達することが定められている上半期為替情勢報告書(the semiannual exchange rate report)の中では、中国を「通貨交換レートの人為的操作をしている国」と断定することは先送りし、引き続き外交ルートを通して人民元の切り下げの実現を求めていくこととした。
これは、12日から始まる核サミット参加のために訪米する胡錦濤国家主席に配慮した、いわば中国の対米政策軟化と引き換えの決定である。
Timothy Geithner財務長官は、「中国は人民元を対ドルで固定し、為替市場に介入して人為的に安く操作してきた」と指摘した上で、「この問題は、今月末のG20中央銀行総裁会議、5月の米中二国間戦略・経済対話、6月のG20サミット会議において中国に翻意を促していく」と米国の対中交渉方針を明らかにした。
さらに同長官は、「こうした場で、外交努力を払うことが、米国にとって最良の国益を増進させる最良の方法である(“the best avenue for advancing U.S. interests at this time” )」と述べた。
そしてThe New York Timesは、「最近中国が、米国が最重要課題(American priorities)とする、イランや北朝鮮の核疑惑対処に関して理解ある態度を示していることを考慮すると、議会への報告を延期したことは、十分説明が付く話である(Delaying the currency report is a small price to pay)」との、中国の専門家の意見を紹介している。
議会側は、すでに超党派の130名の下院議員が、「対中制裁のため懲罰的関税を課すべき」との書簡をホワイトハウスに送っていることもあって、共和党の強硬派を中心に今回の決定を非難する共和党議員が目立っている。
一方、強い影響力を持つ民主党下院議員のSander M. Levin歳出委員長は、「有限の期間の延長であり、目的がはっきりしているので、延期を是としたい」との意見を公表している。
The New York Timesは、「人民元は40%切り下げるべきであるが、今回の報告延期によって、中国側は、自主的に今の人民元の対ドル固定政策から調整過程に入るであろう。いわば自主的な調整に向かうために多少の息継ぎの余裕(some breathing room to do so) を中国に与えるのも良かろう」と論評している。
中国と米国の硬軟取り混ぜた外交折衝は、大人のゲームである。それに引きかえて…
ひたひたと迫り来るインフレは資源高、円安から
日曜日, 4 月 4th, 20102010年4月4日(日)
先週、新日本製鉄とブラジルのVALEは、2010年4ー6月期の鉄鉱石価格について、1トン当たり100―110ドルにすることで暫定合意した。この100―110ドルというレベルは、前年度比で90%前後の値上げとなる。
Financial Timesは、「世界の鉄鉱石価格の決定方式に、今年革命的変化が起きた」と評している。その価格交渉は何十年にもわたり、「相も変わらない、おもしろくもおかしくもない仕事」(a monotonous and unglamorous business)であったのが、中国が世界の強力な鉄鋼生産国となった2000年ころから、鉄鉱石生産者優位の方向へと変質が始まった。
そのころから需給がタイトになり、鉄鉱石価格は上昇し、長年の業界慣行であった日本と鉄鉱石供給会社との間で先行して決められる、いわゆる「ベンチマーク価格」に準じた年度契約を各国で踏襲する方式に異議が唱えられ始めた。唱えたのは需要側の中国である。
そして、今年ついに1960年代から続いてきた、この鉄鉱石供給者と鉄鋼メーカー間の値決め方式は、完全に崩壊した。価格はスポット市場価格に準じた短期契約に基づいて決まることになったのである。Financial Timesは、「これは画期的な事件(a momentous occasion)である。革命が起こった」という業界アナリストのコメントを紹介している。
この革命は、中国、中東、ラテン・アメリカといった新興鉄鋼生産国の急激な需要増が引き起こしたものである。こうした需給関係の変化に伴う価格革命は、70年代の原油、80年代のアルミ、2000年代のコークス炭で起こったことと軌を一にするものに他ならない。
すなわち、まず需給両者間の長期契約から入り、短期スポット市場に移行しきたが、これから先、相対のヘッジ契約が開発され、ついに先物市場が確立していくという、「いつか来たこの道」(where other commodities have already moved in the past)をたどることになるはずである。
現在、鉄鉱石貿易の70%は、ブラジルのVale社, 英豪資本のBHP Billiton社とRio Tinto社の3社が占めるという寡占(oligopoly)状態にある。これらのメーカーは、今年の「革命」を、価格決定方式の「正常化」(normalization)と呼んでいると、同紙は伝えている。
BHP BillitonとRio Tintoは豪州の生産子会社を統合しようとしており、これが豪州の独禁規制当局の許可が取れるとますます寡占化は進行することになる。
鉄鉱石の価格上昇は、鉄鋼製品の上昇に直結する。そして1台あたり1トンの鉄鋼を消費する自動車産業を直撃する。そして1トンの銑鉄を生産するのに必要な鉄鉱石は1.6トンという関係にある。欧州の自動車産業がEUの独禁規制当局に、「不当な価格支配力」の排除を求めて提訴の動きを開始したとFinancial Timesは本日トップ記事で伝えている。
寡占化で交渉力を高めてきた鉄鉱石メーカーは、中国の「自己主張」をきっかけにして、需要者有利の局面をつくりだすことができた。しかしスポット市場への移行は、価格交渉の透明化をもたらすだけでなく、需給関係の変動をもろに、市場参加者双方が受けることを意味する。
鉄鉱石価格の90%上昇は、世界的なインフレのトリガーとなるか、自動車などの鉄鋼最終製品市場の縮退を招いて新たな経済危機をもたらすか、まさに「革命的状況」の第一幕が始まった。
3月の米国の雇用増加は本物か?
土曜日, 4 月 3rd, 20102010年4月3日(土)
米国労働省労働統計局は、イースター休暇に入った金曜日に、株式市場が注視してきた3月の労働統計調査を発表した。
インターネット上に掲載されたデータによると、失業者総数は1500万人からほとんど変化せず、失業率も9.7%と変化が無かったが、非農業部門の新規雇用は、前月比で16.2万人増加した。主な増加要因としては、国勢調査のための臨時調査員と、医療・介護産業従業員の雇用拡大があげられている。
この発表に対して、オバマ大統領は、「ここ2年で最良のニュース(the best news)だ。われわれが取ってきた厳しい政策は時には不人気ではあったが、とうとう失業率の増加に歯止めとなって現れ、リセッションからの脱却に力を発揮してくれている」と笑顔で、ノースカロライナのタウンミーティング風の集会で聴衆に語りかけた。
しかし数字を仔細に見れば、そう手放しで楽観はできないと、The New York Timesは分析している。まず夏までには終わる4.8万人の国勢調査員がもたらした分が3分の1を占めていること、2月は悪天候のために雇用数が減少していたことでデータが一時的な理由でゆがんでいるのではないかという疑問である。
そして、新規雇用が増加しているのに、失業率が下がらないという乖離(disconnect)も疑問である。その理由について、同紙は、「雇用意欲喪失者(discouraged workers)が、職探しを始めたからではないか」と推測している。
(米国の失業率統計では、「失業」とは、16歳以上の「生産年齢人口」に数えられる人々の中で、統計指定日に雇用されていない人を指している。ただし、過去12ヶ月の間に休職活動を行わなかった人は、「生産年齢人口」の中から除外され、上述の「雇用意欲喪失者(discouraged workers)に分類される)
また、新規雇用機会の大半がパート職であるので、広義の失業率(フルタイムで働きたいと希望しながらもパートで働いている状態の人も失業とカウントする)は、16.8%から16.9%に上昇している。
過去半年間失業状態が続いている人の数も、1500万人の失業者の大半を占めている。他の経済指標には、明るさが見え始めているのにも関わらず失業率は楽観をまったく許さない。
現在米国政府は、来年の失業率を9.8%と予測し、2010年でも8.4%、2007年のレベルである5%近辺に戻るのは2016年であるとしている。今次の経済危機は失業率から見るといわば全治7年と見ているわけである。
イースター休暇中に、人々がこの失業率と新規雇用数の動向をどう読み解いたのかという問いに対して、週明けのNY株式市場が答えを出してくれるはずである。