ドバイからギリシャ、ポルトガルに飛び火。国家リスク時代の再来
金曜日, 3 月 26th, 20102010年3月25日(木)
昨年後半ドバイで発生した国家財政破綻が、ギリシャに飛び火して国際金融界は揺れてきたが、ついに大方の予想の通り、その「死に至る病」にもなりかねない問題はいよいよポルトガルに伝染した。
今週格付け会社Fitchは、ポルトガルの長期債務に関する格付けをAA からAA-に一段下げ、イタリアとキプロスと同レベルにおいた。ちなみに破綻したギリシャは二段下のBBB+である。
この格下げの理由として、Fitchはポルトガルの2009年の赤字予算の額がGDPの9.3%に達したことをあげ、それを「2009年の著しい予算執行上の劣後」(“significant budgetary underperformance”)と表現している。
また同社の関係者は「これはまさしくポルトガルの信用を下げる経済的・構造的な巨大な財政的なショック(“a sizeable fiscal shock”)だ」と、Financial Timesに対してコメントをしている。
欧州の財政危機の深刻化がはっきりするにつれ、水曜日のNY市場は大きく揺れた。前日17ヶ月ぶりにリーマンショック直前水準まで戻した、NYのダウ平均株価は、52.68 ポイント下げて10836.15ドルとなった。国債、金、原油も下げた。ドルは対ユーロ、対円で大きく上昇している。1ユーロは$1.3315と$1.3388から下落。円も92.16 円と90.41円から下落した。
いつもは逆の動きとなる株と債券がともに値を下げ、一方いつもは同じ方向に動くドルと国債であるが、ドル高下にもかかわらず、国債は大幅に値を下げた。財政赤字対策で今後国債の大幅増発が予想されていることに加えて、金利スワップ取引業者が、予想外のスワップ金利の下降で、国債の金利を割り込んだために手仕舞いをしたことが大きく影響した。市場が、米国の長期的な財政危機を見越して国債離れを起こしているのだろうか。
The Wall Street Journalは、この日行われた5年物米国債の消化が思わしくなかったことに関し、これから先増発される国債に市場の消化能力が追いついていかないとの懸念が急に膨らんできたのかもしれないとして、「これは国債利回り上昇につながる最初のサインである。見逃してはならない」とのMorgan Stanleyのアナリストの意見を紹介している。しかし大勢は、国債に関しては、「悪条件は織り込まれてきた」と見る向きが多いと結論づけている。
ギリシャの経済危機に対しては、「ユーロ圏内にIMF支援を引き入れること」に反対してきた、欧州中銀やドイツが態度を変え支援を求める動きに転じた。ポルトガルは国際金融界の信用回復のために今週超緊縮財政を国会決議をしようとしている。緊縮政策(austerity measures)は必ず国内政治の混乱と社会不安を起こすのはすでにギリシャで騒擾状態が続いていることで証明されている。
日米欧の3極がそろって、リーマンショック後の経済縮小・景気後退の時代から、国内政治の要請に答える形での財政支出増大を原因とする財政破綻の深刻化の時代に入ってきた。
支持率急落鳩山政権、意のままにならぬ日銀に圧力。聞く振りする日銀。
土曜日, 3 月 20th, 20102010年3月18日(木)
日銀は昨日金融政策決定会合を開催した。そこで、外部委員2名が反対票を投じ5対2で、3カ月の短期資金を年0.1%の金利で金融機関へ資金供給する枠を、現在の10兆円から20兆円に拡大することを決定した。また、もはや下げ余地のない政策金利は全員一致で、0.1%に据え置かれることとなった。
この微温湯的政策決定を報ずるFinancial Timesは、「日銀の政策委員の意見が分かれたことをみても、日銀はデフレ対策を取るべし」との外部圧力に従う振りはしたが、金融政策の基本は変えず、まさに中央銀行の独立を宣言するとの信号を送っている。それを反映したこの新型オペの枠拡大は実効性の無い形ばかりのもの」と論評している。
さらにFinancial Timesは、「日銀総裁は今回の政策決定を金融緩和策(easing)とみなせると会見では言ったが、その数時間前に発表された文書の中には、easingを表す言葉(e-words)はどこにも無かった」と指摘している。
一方、The Wall Street Journalは、この日銀の動きは、米国連邦準備制度(FRB)や各国中央銀行がリーマンショック後の緊急金融対策・経済刺激財政政策からの脱却(exit policies)に転ずる中で、世界の流れに棹を差すものとコメントしている。
そしてその理由を、「政治資金問題で急速に支持を失った鳩山政権が、デフレ脱却による景気回復による人気挽回のため、日銀に圧力をかけているから」と断じている。さらに同紙は、「もし本気ならば、この新型オペの固定金利での短期貸し出し期間を6ヶ月に延長して長期金利の低下を促す手もあったはず」との専門家の意見を紹介している。
The New York Timesも、世界の潮流とは逆であるとのコメントの後で、「どんなに日銀が流動性を供給したところで、市中銀行が貸し出し先を見つけるのに苦労している現況ではたいした効果は無い。日本はいわゆる「流動性の陥穽」(a liquidity trap)に入り込んでしまったままなのだから」と断じている。
一方、日銀の国債引き受けの無制限の拡大は絶対にすべきではないとの論調は各紙に共通している。The Wall Street Journal は、「どんなに政治家が日銀による国債買い入れ枠の拡大を叫んでも、財政規律がすでに破綻状態にある日本の中央銀行としては取りえない策だ」と論評している。Financial TimesもそのLEX Columnで、引き受け枠の拡大は、日銀の信頼性に関わる問題としてやるべきでないとの立場を取っている。
「人民元の為替変動相場制への復帰」は対米交渉カード
火曜日, 3 月 9th, 20102010年3月8日(月)
人民元は、2008年中半以来対ドルで実質的に固定化されてきたが、米国はオバマ大統領を先頭に,人民元の切り上げを求めて強い圧力をかけつづけている。これに対して中国側はふたつのトーンの異なる信号(mixed signals)を週末に連続して発信した。
ひとつは金曜日の全人代における「合理的な均衡水準における人民元レートの基本的安定を保つ」との温家宝首相の演説である。今ひとつは、中国人民銀行周小川総裁が、翌土曜日の記者会見において「レートは各種の経済指標に基づいて機動的に調整する必要がある」と述べたことである。
温家宝首相の人民元に関する発言は、「内需拡大、物価上昇率3%、8%成長の目標を達成しながらバブル発生の抑制を図る」という経済政策パッケージのコンテクストの中で行われたものであるが、この「合理的な均衡水準における人民元レートの基本的安定を保つ」との人民元部分は、従来の「切り上げ圧力には屈しない」という首相発言の繰り返しであり、いわば「情報量ゼロ」である。
一方、その翌日の中央銀行総裁発言は人民元切り上げ問題に大きく踏み込んだ発言となった。Financial Timesによると、この中銀総裁発言は、「(人民元レートの対ドル固定は)世界の金融危機への対処の一環として取られた政策である。早晩、脱却する意思を持っている」“This is a part of our package of policies for dealing with the global financial crisis. Sooner or later, we will exit the policies.”となっている。
これは、アドバルーンとしてあげた前日の首相演説に対する、米国などの反応を見た上での計算された発言と考えられるが、The Wall Street Journalを始め米国の各紙は、「中国首脳がこれまでしばしば強調してきた、『条件をつけない通貨安定』(currency stability without much qualification)に比較して、切り上げ方向に足を踏み出したものであると論評している。
なお、中国政府がcurrency stabilityというときは、『人民元の対ドル固定化』のことであることに注意が必要である。しかし、当然のことではあるが中銀総裁は、切り上げ時期についてはまったく言及していない(no hint about the timing)。
さて三つ目の信号が中国政府から出てきた、それは日曜日に記者会見を行った楊外相の発言である。同首相は、「中米関係改善は米国の態度しだいである」との基本姿勢を繰り返し、「関係悪化の責任は中国にはない。米国は中国の立場を真剣に考慮し、中国の最重要国益(China’s core interests)を尊重すべきである」と発言。さらに「中国は原則に忠実であろうとしているだけで、強行外交(being hardline)に転じたわけではない」と質問に答える形で、その立場を擁護した。
中国は、人民元レート固定は、米国などが引き起こした金融危機対処のため世界のためにやむなくとっている政策であるとし、問題を対米カードのひとつとして台湾問題、チベット問題と同列に並べて交渉しようとのしたしたたかな計算をしている。
そして、政府関係者は統制の取れたひとつの声(one voice)で順序良く、信号を発信していることが、金曜日、土曜日、日曜日の上記の要人発言からもよく分かる。
ギリシャ財政危機は一服感、正念場はここ1-2ヶ月
日曜日, 3 月 7th, 20102010年3月5日(金)
ギリシャは、その国家財政破綻からユーロ圏全体を揺るがす経済危機の震源地となってきたが、木曜日に行われた50億ユーロ(68億ドル)の10年物ギリシャ国債の入札が、約3倍の応札を得て無事終了した。
先週発表した緊縮財政政策に対して市場の信認を回復したものとギリシャ政府は一息ついている。しかし、その金利レベルは年利6.25%で、ギリシャが2001年にユーロ圏入りしてからもっとも高いものとなった。これは、同じく金融危機に瀕しているポルトガルを2ポイント上回り、ドイツの2倍のレベルという高金利という犠牲と引き換えに成立した取引といえる。
そしてギリシャ政府は「今回の国債を落札した投資家の75%は年金基金と保険会社であり長期的な観点からの購入であった」と政府関係者は、購入者の太宗がまじめな投資家(Real Money Investors)であったとし、短期的利益を求めるヘッジファンドではなかったことを強調している。
国債入札に先立ち、George Papandreou首相は、現在も引き続きアテネを混乱に陥れている労組の暴力的な反対運動に抗して、先週公務員の賃金カットと消費税率の引き上げを行った。そして同首相はさらに、金曜日にドイツのメルケル首相、日曜日にフランスのサルコジ大統領、来週火曜日にオバマ米国大統領を歴訪して支援を要請する。
一方、独仏ともに今回の国債入札が無事終わったことを見て、「最悪の危機は回避された。追加支援の必要なし」との態度をとり始めている。基本的にはギリシャ問題をEU域内で解決したいというのが欧州中央銀行も含めた各国の本音である。
こうしたことを背景にして、ギリシャ側は本日のメルケル首相との会談で明確になるドイツからの支援に注目しており、「もしドイツの支援がなければ直ちにIMFの支援を要請する」とギリシャ政府関係者が先手を打って言明している。オバマ大統領との会談のあと、IMFの訪問もすでに日程に組まれているのである。
Financial TimesもThe New York Timesもともに、ギリシャは、4月に100億ユーロ、先行き 2ヶ月で200億ユーロの国債償還期限を迎えるので、その借り換えを控えて、機関投資家のギリシャに対する見方は引き続き慎重(wary)であることを取り上げている。
2010年は、まさにユーロ経済圏と通貨ユーロが、PIGS(ポルトガル、イタリア、ギリシャ、スペイン)と呼ばれる周縁諸国の財政破綻に端を発する大きな試練に入った年となりつつある。