S&P日本国債の見通しを下げる:財政破綻国家の烙印でなければよいが
水曜日, 1 月 27th, 20102010年1月27日(水)
格付け会社のスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が、日本の国家としての格付けを長期はダブルA、短期はA-1+に据え置くものの、Outlookと称される将来の見通しを「安定的」から「negative」に変更した。理由は『新政権に負債の膨張を圧縮しようとする意思が見えないこと』であると発表している。
この決定は、日銀が基準金利を13ヶ月連続して0.1%に据え置き、2010 年と2011年のデフレが予想より緩和すると発表した直後に行われたが、これにより、S&Pが、財政政策の選択余地を失った新政権の財政再建計画(budget consolidation plans)への失望を改めて世に問うた形になった。
S&Pは、「見通しの変更は、日本政府がますます経済政策を柔軟に進める力を失いつつあることを反映している。財政規律を回復し、デフレ対策を十分打たなければ、格付けの引き下げの可能性がある」と警告し、「それにしてもは鳩山政権の財政政策に関する動きは予想を裏切って遅い」と付け加えた。
白川日銀総裁は、「現在のところ景気に対する上振れ、下振れリスクは、まずまずバランスしている(roughly balanced)」と発言し、菅財務大臣の反応は、「日銀にはもっとやれることがあるはず」と日銀に矛先を向けた。そして菅大臣は、「2-3年もすればデフレ脱却が見えてくるということで政府の見方は一致している」と語った。
日本の経済情勢に関するFinacial Timesの論評欄Lex Columnの評価は興味深い:
「まるで、『S&Pは甘い、格下げすべきだ』といわんばかりに財務省の役人たちの舌打ち(the sucking of teeth)が聞こえてくるようだ。」
「日銀総裁の昼行灯発言(the soporific statement)に対して、デフレ対策に腰が引けている(pulling its punches)との非難がますます強まっているのだ」としたと情勢を描写した上で、「この白川総裁に向けた批判が、公平ではない」と日銀を擁護している。
「白川総裁は、バーナンキのような行動力がないし、でくの坊(a slouch)のように見えるが、日銀がやれることはすべてやりつくしているといえる。国債の日銀による消化も大量にこなし、政策金利は長くzeroレベルに張り付かせている。大量の流動性供給を行っても市中銀行はもてあましているのが実態だ。」
「財政政策が手詰まりになった政府からは、金融政策をもっとやってデフレ対策をやれとの圧力が高まるだろうが、白川総裁よ、今のままがんばれ(But Mr Shirakawa is right to stand firm for now.)」とエールを送っているのだ。
ここで注目すべきは、白川総裁の行動に、soporific(こん睡状態)という形容詞と、slouch(でくの坊)という名詞が使われ、バーナンキFBR議長には、hyperactive(超行動派)という形容詞が使われたことである。
赤字国債の乱発による人気取り政策が将来大きなツケを払うことになることは全員がわかっていても、それをとがめる政治家はおろか経済学者もメディアの声は日本では小さい。
世界を覆う黒い雲:政治の混迷、経済の不透明感
日曜日, 1 月 24th, 20102010年1月23日(金)
昨日のThe New York Timesトップ記事は、「新銀行規正法案、市場を押し下げる」(New Bank Rules Sink Stock)である。オバマ政権が、銀行が過剰にリスクをとって収益確保に走ることを抑制しようとしていることに、株式市場が嫌気したのである。
そして同紙の本日の見出しを順番に見ていくと、トップ見出しは、「オバマ、健保改革法案通過のために大幅譲歩」(Obama Retreats on Health)となっており、上院補欠選挙で重要な1議席を失ったために政治的な妥協をせざるを得ないことが大きな話題となっていることを報じている。次には、「中国、バブル抑制策で成長軌道後退の恐れ」(China Seeks to Temper Boom, Stirs Growth Fear)が続く。
さて、金曜日の東京市場でダウ平均株価が、278円の下げで12月30日以来の安値である、10,590円を記録したのであるがこれは、上述のような米国の政治経済の不安要素と、円高への反転が原因となった。
そのあとをうけた金曜日のNY市場も、ダウ工業株平均株価が3日連続で下げ、217ドル安となった。このNY市場の大幅安は、①上院銀行委員会における金融機関への規制強化方針の帰趨への心配、②中国政府がインフレ防止とバブル崩壊防止のために、対銀行貸し出し金利を引き上げるのではないかとの観測、③バーナンキFRB議長の再任が不透明になったことなどが原因である。
一方GEは、10-12月の四半期では、税引き後利益は19%減少し、約3000億円となったが、アナリストの収益予想を上回ったことで、2%株価が上昇した。同社Immelt会長は「わが社が関係する「世界」では景気は回復中である」と述べ、「金融事業の低迷があるものの、来期以降それを上回る産業界からの収益が貢献してくる」との発言を行った。このことが同社の来期の大幅な収益改善を予想させたのである。
政治と経済の混迷、経済のグローバル化による原因と結果の錯綜などますます不透明な状況が続く。米国では厳冬が続き地球温暖化論議が一気に不活発になっているが、原油先物相場はいったん押しあがったあと一気に下げている。予想のつかないことが次々と起こっていくのが常態化している。
注目すべきこと:中国のインフレの足音の高まり
日曜日, 1 月 17th, 20102010年1月16日(土)
マニラに本拠を置くアジア開発銀行( the Asian Development Bank: ADB)が、経済危機のあとの景気回復過程にあり9%に近い成長を続ける中国と、8%近い成長へと急速に回復しているインドで、「インフレ懸念が発生しつつある」と警鐘を鳴らし始めている。
同銀行はさらに「アジア各国は将来経済危機が到来してもそれに耐えられるように、経済・財政システムの実効ある構造改革を進めるべきである」と各国に呼びかけた。
同行の黒田総裁は、マニラで開催された経済フォーラムで演説し、「最近中国が取った、銀行の準備率引き上げによる金融引き締め策は、インフレ防止の観点から適切なもの(appropriate)である」と語り、「中国におけるインフレは現在のところ深刻なものではないが、不動産価格の高騰は懸念材料である」と論評した。
この経済フォーラムでは、同時に各種の報告が発表されたが、一様に、「インドと中国はインフレ対策を取るべき」と警告していることが注目される。特に中国については、昨年中国政府が注入した60兆円の景気対策が効果を発揮したと評価しつつも、資産バブルの誘発の危険を指摘している。
そして、「中国政府は、銀行の貸し出しを抑制し、金利を引き上げるべきである」とし、ここ1年半の間対ドルで固定状態に固定されている(pegged)人民元を「緩やかな切り上げの軌道に誘導すること」を求めている。
インドについては、インフレ懸念と同時に財政赤字の増大についての懸念を示し、インド政府に景気対策と同時に財政規律の維持を求めている。また経済成長が6%近いレベルまで回復したンドネシアについては、「経済危機からの脱却は順調であるが、『いまだ基盤は脆弱』である」として、インフレ対策が過度になって、景気の腰を折ることのないようにと釘を刺している。
欧米では起債ラッシュ、長期金利急上昇の予感
水曜日, 1 月 13th, 20102010年1月12日(火)
欧米の金融・資本市場で大きな動きが出てきた。政府も企業も、低金利の今のうちに債券を発行しておこうと一種のラッシュ状態(a flurry)になっている。
直近でも、Virgin Media、 BMW、サッカークラブの Manchester Unitedが今週月曜日に総額200億ドル(約2兆円)の社債を発行した。ポーランドやメキシコ政府などの各国政府も同様の動きをしている。
今月に入って起債された国・社債の総額は、7.5兆円に達しているが、その3分の2は、金融危機で痛んだバランスシートの修復が主目的となっている。
今週は欧州企業によるジャンク債の起債ラッシュとなる予定であり、リーマンショック以来始めて、「投資適格」の格付けを持たない企業も社債発行できる状況になった。
社債の金利レベルが、国債レベルまで下がっていることが、起債の意欲を高めている理由である。そして多くの企業は、「今年後半には景気回復に伴い、各国中央銀行は「出口戦略」(exit policy)に転じて、金利を引き上げるであろう」と読んだ上での行動でもある。
「昨年各国政府が取った景気対策最優先の金融財政政策の終わりを予感し、投資先に困っている機関投資家の資金を低利で吸収できるのは今だ」というわけである。
その反対に、現在の景気回復は息切れし、二番底(a double dip)が来るかもしれないとの恐怖が、この債券市場への殺到の背景だとする解説もある。二番底になれば、起債市場が縮小しリーマンショック前に借りたお金の借り換え(refinance)が今の条件ではできなくなる危険があるというわけである。
こうした社債発行ラッシュ状況を、Financial Timesは、社債相場の暴落につながる危険の可能性があるとし、「2年前の再来」リスクを警告している。いつも「この道はいつか来た道」であり、「人は忘れやすい」のである。
中国快進撃 チャイナアズNO.1
月曜日, 1 月 11th, 20102010年1月11日(日)
2009年の中国の輸出は1.2兆ドル(約120兆円)で、前年比では16%減となったものの、ドイツを抜き世界首位になる。2兆ドルを越える外貨準備高はすでに断トツの世界一。自動車販売台数も1360万台と米国を抜いて世界一。 2010年中にはGDPは、日本を抜いて世界第2位となるのは確実である。
昨年12月の中国からの輸出は前年比で17.7%増となり、14ヶ月ぶりに増加に転じた。対米では15.9%増加、対EUで10.2%増加となっている。一方輸入は55.9%の増加を記録しており、景気の回復と内需の拡大傾向を裏付ける結果となった。
輸出の増加は、通貨元に対する切り上げ圧力を高めるが、中国政府は国内景気回復が元切り上げによって勢いをそがれることに警戒感を強めている。元の切り上げには、中国経済の回復、米欧の景気回復、輸出の回復という三つの要素が満たされることが必要というのが中国政府の立場である。
元は政策的に対ドルで固定された状態が続いている。今後は緩やかにレート調整が行われるものと思われるが、米欧政府の圧力も日増しに強まって来ている。Financial Timesは、「2010年内に3%の切り上げ」というエコノミストの予測を取り上げている。
一方、中国政府は国内の景気対策に関しては、「景気回復の兆候はあるが、財政金融政策は、直近では変更を加えない」と言明している。胡錦濤国家主席は、政府高官の出席する会議で、「財政政策は積極的に行い(pro-active)、金融政策は適度に緩和(moderately loose)を続ける」と発言してこの方針を確認している。
同主席は政策の優先度は、「内需拡大、経済成長、経済構造改革、民生向上ためのプロジェクト推進」の4点に置かれていると言明しており、今後とも積極的な景気の下支えを続ける決意を固めていることを内外に示している。
一方、昨年政府が60兆円の景気浮揚策を実施し、金融緩和策を取ったことから、マネーサプライは、M1、M2ともに30%を超えるレベルに膨張しており、11月には消費者物価指数は10ヶ月ぶりにプラスに転じた。元切り上げを見越した外国からの資金の流入も続いている。
インフレの足音も、世界で一番早く聞こえ始めているのが中国である。
世界景気に『慎重な楽観論』が台頭
火曜日, 1 月 5th, 20102010年1月5日(火)
12月の統計を見ると、機械受注が世界的に急増しており、各国の製造家はここ4年来始めて将来を楽観視し始めている。これはアジア各国の景気回復が欧米に伝播している結果だとFinancial Timesが分析している。こうした強気の指標を見て年明けの先進国の株式市場はいっせいに反発を見せた。
4日付けの同紙は、「機械受注増勢、株価を押し上げ」、「アジアの景気回復の星の輝度最高」、「米国の機械出荷2006年以来の最高値」、「中国とインドがアジアの回復を先導」、「景気回復期待で銀行貸し出し額増加」とプラス基調の見出しで埋められている。
この株式市場押し上げの根拠となったのはJP Morganが発表する各国の購買責任者指数national purchasing managers’ indicesである。同指数は、2006年4月以来のレベルに上昇し、新規受注の指数も5年半ぶりの高さに回復している。
また製造業の新規雇用計画の指数も2008年3月以来の水準に戻していて、工場リストラの荒波もようやく収束段階に入ったと観測されている。この新規雇用計画指数はもっとも先の読みにくい機械生産高(the most volatile part of the economy)を占う先行指標として定評があるので、この指数どおりの状況が持続すれば、景気回復も本格化することになる。
国別にこれらの指数の動きを見ると、オーストラリアとスペインの回復は遅れているが、中国とインドが先導役を果たしており、米国も2006年4月以来の力強い回復を示している。英国はじめ欧州は全域でほぼ堅調である。
こうした状況を英国の銀行の経済アナリストは、「暗い2009年が過ぎ、これらの数字を見る限り、今年1年に『慎重な楽観論』を持っても根拠のないことではない」 (after a “dismal” 2009, the figures gave ”some grounds for cautious optimism for the year ahead)と論評している。
しかし、これらの記事の中に、日本が一度も言及されていないというのも重要な事実である。
2010年何に投資すべきか
日曜日, 1 月 3rd, 20102010年1月2日(土)
Financial Timesが、2000年代の株式・債券・商品・通貨市場を振り返って、将来を展望している。
同紙は、昨年中半から世界の市況は上昇に転じてきたが安心はできないと警鐘を鳴らしている。各国政府が景気対策のために取ってきたいわゆる「ゼロ金利と赤字財政政策」から卒業するときがいつかは来る。この「出口政策」(exit strategy)への転換がもたらす衝撃が懸念されている。一方国債の大量発行とゼロ金利がインフレを誘発し、バブルを招く危険性は常に存在している、というのがその骨子である。
この10年間でもっとも影響を与えたのは、金融商品。高利回りで投資家を引き付け、大きく花開き一気にしぼんだ(flourished and then floundered)。「投資銀行を2000年代の悪魔だと呼ぶならば、デリバティブ商品はその破壊兵器だったといえよう」と論評する。
サブプライム住宅ローンに発する崩壊のドミノは全世界を駆け巡り、大手銀行の救済のために政府資金が大量に投入されたが、世界は、2008年9月のLehman Brothers倒産を機に株式市場の歴史的暴落を経験することとなった。
この憂鬱な流れと対照を成す注目すべきことは新興国市場の躍進である。この10年間で、ロシアのMicex indexは802%,ブラジルのBovespaは301%, インドのSensexは249%, 中国のShanghai Composite indexは140%上昇。2000年代は、「若さが勝利した(youth triumphed over maturity)」時代と総括される。先進国株式市場のさびしい結果はいまさら説明する必要はない。
中国の工業生産の急速な伸びは、原油、鉄鉱石、石炭、銅などの金属を中心に幅広く原材料の高騰を招いた。その結果、原油・銅などの商品市場は賑わい、原油は2008年の150ドル近いピークからの半値までの下落はあったものの10年間で210%の伸び、金は281%、銅は290%の上昇。資源枯渇の予感もあって、投機のカネは「モノ」へと大きく向かっている。
通貨市場での最も大きな出来事は、ドルが、10年間で23.5%の減価を起こしたこと。対ドルでユーロは43%上昇、円は9%の上昇。円がファンダメンタルズの悪さにもかかわらず「リスク回避」のために選好されているというのも皮肉なことである。
債券市場の動きは、10年物の米国国債の利回りが、10年間で6.60%から、3.84%まで下落したことに象徴されている。このように先進国における国債利回りは、大量発行にもかかわらず、景気対策のために取られた超低金利政策の結果低位に安定している。
FTがここに概観したように、グローバル経済は相互に緊密に連結され、IT時代の技術はグローバルな情報の均質化をもたらしている。そして情報の速度と量が増えるに従い、逆にますます不安定度を増していく。それゆえに商品・金融・株式・債券市場はこれまで以上にグローバルに一体化・同時化していくので、個別の市場分析は役に立たない時代になった。
今年、日本株は「アジアで一人負け」を脱せるか
金曜日, 1 月 1st, 20102010年1月1日(金)
2009年は、中国を始めとするアジアの株式市場にとって2003年以来の最良の年となり、世界景気の回復のリード役を果たした。ロンドン株式市場が発表するアジア太平洋株式指標(FTSE All-World Asia-Pacific index)は37%の上昇となったが、日本株を除外すると67%の上昇となった。
まさに日本株が足を引っ張ったとFinancial Timesが昨年一年を総括している。そしてFinancial Timesは、その記事の見出しを、’Asian market rally leaves Japan standing’とした。アジア市場の回復から日本市場は「置いてきぼり」状態にあるというわけである。
日経225種平均は、2009年末を10,546.44で引けたが、これは年初来19%の上昇に過ぎず、アジア太平洋地域の株価指標の大きな足かせとなった。(a marked underperformer)。もっとも日本のこの結果は、2008年が42%の58年来の記録的下落であったことに比べれば、大幅な改善とは言える。一方幅広い銘柄を含むTopix指数の上昇は、5.6%に留まった。
あるファンド系のアナリストは、『この見劣りのする日本株の成績は、総選挙によるものだ。8月の総選挙までの株価は、おおむね先進諸国の市場の動きに伍していた。新政権成立のあと、市場は失速した。全業種にわたり企業収益は打撃を受け、東京市場は世界に追いつけなかった』と分析する。
昨年の日本市場の動きを象徴するのは日本航空である。もっともかまびすしい話題のたねになり、破産の危険に伴う苦しみが続く日本航空は、投資家に敬遠され株価は、最高値の1/3の67円まで転落した。
アジア株がどれだけ息を吹き返したのかを見てみると、2009年のアジア株でもっとも大きな上昇を示したのは、スリランカ株式市場である。26年続いた内戦の終結と、5年来の低水準に下がった金利を囃しての株高は、コロンボ株式市場平均を125%押し上げた。それに続くのが、ジャカルタの86%高、インドのムンバイの81%高である。これらの市場の伸びの勢いは、中国政府の思い切った超金融緩和策によって「再点火」された上海の80%高をしのいでいる。
さらに続くのは、台北の78%高。香港は52%高となっている。アジアの他の市場は、総じて40%ないし60%高となっている。対照を成すのは、景気回復を見た政府が金利を3度にわたり引き上げた豪州の株価である。その上昇は31%に留まった。
アジア株評価のために、日本をあからさまに除外した’the FTSE All-World Asia-Pacific ex-Japan index’が計算されている現状を今年は脱することはできるであろうか。